私は就職したことがない。
劇団は就職ではないだろう、給料制ではないし。
この辺りでも給料制の劇団はあるが、子供向けの芝居を学校公演で回っている、同じ芝居を何十回と繰り返し朝早くからのあちこちの移動で大変な仕事だ。旦那は二年ほどだったか、客演で参加していたことがある。客演なので、しっかりリハーサルからギャラも出て、経済的には大変助かったが、旦那のメンタルがダメになった。
私も以前、いわゆる商業演劇（大きな劇場で有名人が座長の芝居、座長が歌手なら途中歌もあるが、私が出ていたのは今は亡き大御所年配俳優さん座長）に出たことがあるが、毎日二回ほど、１ヶ月、同じ芝居を繰り返す。
つまらないっと言ってはいけないが、モチベーション保持が非常に難しい。
ギャラは保証されていたが、その１ヶ月をしっかりバイトしてた方が稼ぎがあったぐらいだ。
そして、東京俳優と地方俳優とで差別もある。
もちろん、当時のこと、20年以上も前だから今は違うかもしれない。
あからさまな、差別がまかり通っている事に非常に不快感を持った。
その世界で生きている方々には申し訳ないが、二度とやりたくないと思った。
舞台はギャラがちゃんと出る公演は数少ない。
まして、自分たちがやりたい芝居を自主公演なんて、下手すれば持ち出しだ。
たまにあるテレビやラジオの仕事も無名だから大した金額は出ない。
バイトとの両立も大変だ。貧乏に耐えうるメンタルが必要です。
体力も。
旦那は、その点、結婚するまで実家暮らしだから、帰れば食べ物や風呂にも入れ、寝る場所の心配もなく、高校の演劇部から卒業後そのまま、うちの劇団養成所、そして、そのまま劇団に、だから苦労してきた度合いが私とは違うのだろう。
私も世間知らずで甘ちゃんだが、それ以上ということだ。
それが、現在大きなものを背負うようになってきての闇落ちなのかも。
私は、演劇とは無縁でど田舎から出て、ボロアパートに一人暮らし、バイトしながら、養成所の夜間部に通い、何度か公演の手伝いをこなしてからの劇団入りだった。
でも、根が真面目で頑固、すでに剣道有段者だったから、不義理はしない、プライドも高い。だから家賃滞納はしたことがない。
チャリ銭しかなくなって、でも食べたくて、ベーカリーの前でパン2個を買うかどうしようか、これを今買ってしまったら、バイト代が入るまでずっと食べれないかもと、凄く悩んだ事を覚えている。
『武士は食わねど高楊枝』だ。
でも、うちの母は、子供が『すべて』の人生を生きていて、子離れが上手く出来ず身を滅ぼした類いの人だったから、しょっちゅう、荷物が届いた。
中身は食べ物だ。米や母が畑で作った野菜、インスタント食品、緑茶好きな私に地元のお茶。
お金が封筒に入っていたこともよくあった。
食べるのに困ってどうしようかなぁ、ってなる頃、荷物が届き、食い繋ぐ。
劇団でも下っ端の時はスタッフワークも半端なくあるので、公演が近くなると寝不足が続く。
三日間寝ずにバイトにも稽古にも出て、三日目の夜中の衣裳縫いで、目を開けたまま、ガクッんと舟こいで、自分も回りもビックリ。
目を開けたまま眠る事が出来る人だった。
忍者みたいだな😁
でも、その頃は、ホテルのレストランでのバイトも派遣で結構な古株、仕事もスピーディーにこなし、英会話もある程度できたので、支配人に気に入られており、融通もきかせてもらっていた。
時給もまあまあなところまできていたから、短時間で稼いで芝居に時間も割くことができた。
仕事は様々いっぱいした。正規ではなく、バイト、パートだ。今の仕事か、劇団時代か、どっちが長いだろう。
ほぼ同じキャリアになってきた。
今の仕事も劇団でのスキルがかなりなお役立ち。
新人さんの発声や滑舌の研修担当。
毎日、電話口では、丁寧なオペレーターを演じている。
本当に、ここ数年、モンカスが増殖していて、メンタルを病んで心療内科通いになり休みが続き、結局何人辞めて行ったことか。
顔が見えないので平気で高圧的な態度をとり無理な要求を執拗にしてくる、揚げ足をとる事に快感を覚えているようなお客さんが本当に増えた。
時には、厳しい態度のオペレーターも演じないといけなくなっているが、演技ではなく、本気でブチギレそうになるのを、抑制する事が日々増えている。
コロナ影響で買い占めに走る人、レジに並ぶ列に平気で横入りする人、マスクがないと店員に暴言を吐く人、顔が見えても平気でやってのけるのだから、顔が見えない電話では尚更やり易いだろう。
日本人の良さをもう一度考え直して欲しいと思うが、仕事って、何をやってもほんと大変。
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